2006年08月03日

翻訳絵本と原作3 翻訳について

ぼちぼちいこか「翻訳絵本と原作」と題して第1弾第2弾と書いた後、予告で終わってしまっていた第3弾をようやく書こうと思います。


関西弁タイトルのこの絵本は、表紙のカバくんが、消防士、船乗り、ピアニスト・・・といろいろな職業に挑戦していっては失敗を繰り返していって、最後は「どないしたら ええのんやろ」とちょっと考えた末に、「ま、ぼちぼち いこか」とオチがつく、というお話です。


この絵本を見つけたのは確か第1子の妊娠中だったと思います。「両親(夫と私)が関西人だが関東育ち」となることがほぼ確定していたまだ見ぬ我が子に、「関西弁と関西文化」を教えるのにピッタリだなあと思い(大げさ??)、喜んで購入しました(ちなみに、同じような立場の関西人夫婦に赤ちゃんが生まれるときは、よくプレゼントするのですが、極めて好評です)。


帰って夫に見せると、気に入った様子。「へー、おもしろいなあ」などと、いいながらページをめくっていたのですが、その彼が驚いたようにこういいました。「え?? この本、元は英語??」


そうなのです。「予告編」にも書いてあるのですが、この絵本は元は英語の翻訳絵本なのです。私がこの本に出会った当時は、翻訳学校を修了して少しずつ仕事をはじめていたせいか、「翻訳にもいろいろある」ということで、あまり違和感を持たなかったのですが、彼にとっては驚きだったようです。「関西人の作品かと思った」のに、外国の本だったのですから、無理もないですね(笑)。


ということもあって、私もこの本の原作がどういうもので、なぜ関西弁に翻訳されることになったのか知りたくなって、いろいろ調べてみました。そこで分かったのは・・・

訳者の今江祥智さんはご自身も生粋の関西人なのですが、「このカバくんを見ていて関西弁がピッタリだと思ったので、関西弁で訳した」そうなのです。


だから、この絵本はタイトルから最後まですべて関西弁なのです!そもそもタイトルは、"What can a hippopotamus be?"直訳すると『カバくん、何になれるかな?』くらいでしょうか。それが『ぼちぼちいこか』です!(これはお話の最後に出てくるセリフ"take it easy"に通じているのですが)


そして本文も・・・カバくんが何かに挑戦する様子は左ページに、その結果失敗する様子は右ページに描かれているんですが、そのセリフももちろん関西弁。英語では、"A Piano Player? " ---"No." というように、ほとんどが「名詞+?」と「No」の繰り返しなのですが、それに対する訳は、「ボケとつっこみ」のセンスが生きていて、ダジャレのような言葉遊びをしているものもあります。たとえば・・・


「バレリーナは、はなのよう---- はなしにも ならへんわ」
「ピアニストに なる ちからは---- ありすぎやったな」


絵本翻訳教室へようこそという具合。これがもう、カバくんの表情にピッタリで・・・本当に「名訳」だなあと思いますし、第2弾で少しご紹介した絵本翻訳教室へようこそという本の中に、「絵本は絵も訳す」という話が出てくるのですが、まさにこのことだなあと思うのです。


"A Piano Player? " ---"No."  を
「ピアニストに なる ちからは---- ありすぎやったな」
と訳すのは「英文解釈」としては「正解」でないかもしれませんが、絵を含めた「翻訳」だからこそOKなのではないでしょうか?


そして、これは絵本だけでなく、すべての「翻訳」に通じるのじゃないかと思います。単語のひとつひとつの意味をただ逐語的に訳すのではなくて、「文全体の言おうとしていることを理解して、それにふさわしい日本語にすること」、それが翻訳というものではないかな、とこの絵本に出会って思ったのでした。


まあ、これをやり過ぎると「意訳」になってしまうので、それには要注意なのですが・・・私も失敗、あります(涙)。


ということで、第3弾はすっかり遅くなってしまいましたが(原著は予定通り約2週間ほどで到着したのですが、私の怠慢で遅くなりました・・・)、これにて「翻訳絵本と原作」のお話はいちおうおしまいです。また、おもしろい「ネタ」を見つけたら、書きたいと思いますので、よろしくお願いします!


ところで・・・この原著、アメリカでも絶版になってしまっていたのと、ぼちぼちいこかが出版されてから、「関西弁の翻訳」が話題になって原著を求める人が多かったせいもあって、なかなか手に入らない上に、値段がものすごく上がっていたんです。ですが、今回なんとかそれなりの値段?で入手することができました。私が情報収集をしていたのは赤い靴というサイト。絶版本など海外の古い洋書を扱っていて、検索で見つかればすぐに購入できますし、なくても依頼をすれば、捜してくれます。


私は結局、本国のAmazonのマーケットプレイスで見つけたものの購入手続きを代行してもらいました。こういうことも、お願いすればやってもらえます。手数料は発生しますが、海外からだとマーケットプレイスは利用できないので、助かりました。他にも、ここでご紹介した本のなかにあったヴィンテージ絵本も購入できました。古い絵本に興味のある方におすすめのサイトです。

投稿者:尾原美保 20:44 | コメント (7) | トラックバック (0) |

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コメント

「ぼちぼちいこか」の翻訳は、ホント関西弁がピッタリで驚いていたんですよ^^名訳ですよね!
絵本の翻訳は、「絵を訳す」って
なるほど。と思いました!
以前読んだ、ハッチンスの絵本「おやすみみみずく」の役者の渡辺茂男さんも同じようなことをおっしゃっていました。
翻訳も大変なんだと改めて感じました。

それと、サイトの紹介が嬉しかったです^^
絶版の洋書絵本を探してくれるなんて便利なサイトですね!
私も何か欲しいものがあったら利用してみたいと思います♪教えてくださって、ありがとうございます。

nao-yuuka-ayuchan5も『ぼちぼちいこか』ご存知だったんですね!このカバくんって、もはや関西人にしか思えないくらい(笑)、関西弁がしっくりきていますよね。絵本の翻訳って英文が平易、短いから簡単って思われがちですが、実はものすごく練りに練られているんだと思います。
「赤い靴」いいでしょう?お探しの本があったら、ぜひ一度調べてみてくださいね!

カバくんの関西弁、味があっていいですよね☆今江祥智さんってすごい方だなと思いました。ただ方言にしているだけじゃなくて、原文にはないユーモアを取り入れていて。翻訳の世界は奥が深いですね~。

この絵本は中学のとき、国語の先生に読んでもらいました。とても励まされるストーリーで、今でも大好きです。進路に悩む学生にも、ぜひ読んでほしい絵本ですね。

知りませんでした、関西弁で訳されている絵本があるなんて。今度書店にいったら探してみます!
でも、夫婦とも関西人でない私たちは(夫は少し関西に住んでたことがあるけど)、エセ関西弁というか、なんかぎこちない読み方になってしまいそうです(笑)。

コメントありがとうございます!


★ユーリさん、ご存知でしたか、この本!ほんと「翻訳」の奥深さが分かる分かる絵本だなあと思います。この本を読んでくださるなんて、素敵な先生ですね。そうですね、小さい子どもだけでなく、中高生や大学生、社会人でも何かに悩んでいる人には、せひ読んでほしい絵本ですね。


★gowestさん、この絵本は「関西弁」であることもそうですが、ストーリーも絵もとってもいいので、ぜひお手にとってみてください!ちなみに、私と夫の関西人度合い(?)は、育った環境(地域性や両親が関西人かなど)により 夫>>>私 なのですが、夫に言わせると私の読み方は「なっとらん」そうです(笑)。いろいろな読み方でいいと思いますよー。でも、「関西弁ネイティブ」のおともだちがいらっしゃれば、読んでもらうとおもしろいかも??

待ってました!
(という割にはコメントが遅くなってしまった・・・)

この本、おはらさんが以前紹介していた時にとても興味を引かれて、すぐ地元の図書館で取り寄せたんです。幸い原書、日本語版両方ありまして、早速読みました。

なにより、日本語の表現の豊富さ、対して英語の簡潔さ(初め原書読んだ時'No'の連続に驚いたり(笑)。それと、何より関西弁の雄弁さ!題名も素敵(個人的には原題よりもいいと思います)!子供に対する(大人に対しても)温かいエールも感じられるし。やっぱり東京弁(と敢えて書きます)だと雰囲気が出ないですね。

もちろん、シンプルな英語だからこそ「行間を読む」「自由な想像の余地がある」良さもあるんですが・・・。

言葉遊びもあって、こんな本に出会うと「日本に生まれて、日本語に触れる幸」を感じずにはいられません。(大げさ?)

いい本を紹介してくださって、本当にありがとう♪

追伸 角田さんの本の記事、Upしようと思いながらなかなか出来ません・・・。大好きな本で思い入れが強すぎて、逆に筆が進まなくて・・・近々出せたらいいのですが。

かおるこさん、お待たせしました!予習までしてくださっていたのに、遅くなってすみませんでした(涙)。かおるこさんは原著も読まれたんですよね。ネットなどで調べただけでも、右ページは全部「No」らしいということは分かったんです。でも、やっぱり実物を見たくて原著を探していたんですが、見てみるとこんなにも印象が違うのかと驚きました。日本語版はほんとうに「関西弁の雄弁さ」が生かされていますよね。かおるこさんの、お気に入りの1冊となってうれしいです!元気を出したいときなど、また開いてみてくださいね。
追伸:「思い入れが強いと筆が進まない」という気持ちはよーく分かります。私もいつもそうですから・・・ゆっくりお待ちしていますね♪

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